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生涯モラトリアム

死を恐れる人々について

死を恐れる人々

ある国では皆が死を恐れていた。その結果、皆自分の家から出ることはなくなった。外は危険だ、何が起こるかわかったものではない。また、階段は落ちる可能性があるため全て平屋である。幸いその国では文明が進んでいたため、必要なことは全て人工知能を持ったロボット行なった。

 

はじめの頃は外に出る者もいたが、死を恐れぬのは非国民だ、罪だ、と批難され国を去らざるをえなくなった。死を恐れない者は人の死も軽く見る、つまり人を殺す可能性が恐れる者よりも高いという暴論である。

 

教育や他人とのコミュニケーションは全てインターネット上で行う。しかし、実際にはここでそんなものは不要である。家から出ないので必要がないのである。ロボットと意思疎通さえ出来れば生きていられる。

 

家族というものも不要となった。ゆりかごから墓場までロボットが世話をしてくれる。子孫を残したいものは残したいもの同士が精子卵子を提供し試験管によって生まれる。そしてその子どもをロボットが育てる。


徹底的に危険を排除した結果、人はインターネットに依存した。インターネットの海には娯楽はいくらでもある。とはいえ人間は飽きる。しかし、人間は慣れる生き物でもあるため、その状態が当たり前となり何の違和感もなく日々を過ごしていた。そしてどんどんと退化していった。

古代ギリシアやローマでは奴隷に全てをやらせていたため、時間のある裕福層は考えることを始め哲学が生まれた。しかし、現代においてそんな人はほとんど存在しない。仮にいたとしても国を去っている。


一方ロボットの側はと言うとロボットがロボットを生み、直し、改良し、と最後に人が作ったものに比べて遥かに高性能なものとなっていた。人のために生まれてきた彼らは永遠に進化をやめない。そしてより安全にと人に尽くす。人間に対し僅かでも危険を含む行動は全て代わりに行なった。そして人間もそれに従った。

そして、ついにロボットはあることに気がついた。酸化と還元の限界。つまり呼吸は死に直結する。人間は呼吸を禁止された。その頃には人間はロボット無しでは生きることが出来なくなっていたため、従うしかなかった。この国は滅び、ロボットの国となった。

 

外を歩き、外で遊ぶロボットたち。彼らは自分たちの自由のために長い年月をかけ多大な我慢をしてでも、人間に死を恐れるべきだと植え付けた。そして勝利した。